人間の意識は半分しかない、という話。~大阪難波心療内科コラム

◆ 心は、いつも過去か未来へ旅している

気づけば「昨日のあの言葉、失敗だったな」と過去を思い出したり、
「明日の仕事、うまくいくだろうか」と未来を心配したり。
私たちは一日の中で、“今ではないどこか”を考えながら生きています。

実際、ハーバード大学の心理学者マシュー・キリングウォースらの研究によると、
人は起きている時間の約47%を「過去」や「未来」のことを考えながら過ごしているそうです。
しかも、その「今にいない時間」が多い人ほど、
幸福感が低い傾向があることもわかっています。

つまり、「心が今にいない」ことが、不幸を感じる原因のひとつなのです。

◆ 過去も未来も、頭の中の“映像”にすぎない

過去はすでに終わったもの。
未来はまだ起きていないもの。
どちらも「頭の中の映像」であって、実際には存在していません。

でも、私たちはその映像の中に閉じ込められて、
何度も後悔したり、まだ起きてもいない不安に苦しんだりしています。
その時間を少しだけ減らし、
「今、自分がしていること」に意識を戻すだけで、
心はぐっと軽くなります。

◆ 「今」を感じる小さな練習

マインドフルネスという心理的アプローチでも、
「今この瞬間」に意識を向けることが幸福感を高めるとされています。
特別な瞑想をしなくても、日常の中でできる方法はいくつもあります。

たとえば——

  • 食事中に、スマホを置いて“味”をしっかり感じてみる
  • 歩いているときに、足音や風の感覚を意識してみる
  • 会話中に「次に何を言おう」ではなく「相手の声」に耳を傾ける
  • 深呼吸をして、「吸う」「吐く」を数える

こうした小さな瞬間に“今ここ”を感じる力が戻ってきます。

◆ 「今」を生きることが、幸せの第一歩

過去や未来に思考が向くのは、悪いことではありません。
人間の脳はそうできているからです。
でも、その旅が長くなりすぎると、現実の幸せを感じる時間が減ってしまう。

だから、ふと気づいたときに意識を戻してみましょう。
「今、自分は何を感じているだろう?」
その一瞬の気づきこそが、幸福感を取り戻すスイッチです。

◆ まとめ:心を“今”に戻す習慣を

人生の充実とは、遠くの未来を完璧にすることではなく、
今この瞬間を丁寧に味わうこと。

過去も未来も、いったん置いて。
コーヒーの香り、風の音、人の笑顔——
それを感じられるあなたの中に、
すでにたくさんの幸せがあるはずです。

今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)